2014年5月12日月曜日

登記官が職権でなした登記の更正は対抗要件否認の対象とならない

福岡地判平成25年10月28日
判例時報2211号87ページ

「破産法164条1項は、権利の変動について対抗要件を充足する行為が、既に着手された権利の変動を完成するものであることに鑑み、権利変動の原因となる法律行為そのものに否認の理由がない限り、できるだけ対抗要件を具備させることによって当事者に所期の目的を達成させることとするとの趣旨から、同項所定の要件を満たす場合にのみ、特にこれを否認し得ることとした者と解される(平成16年法律第75号による廃止前の破産法(大正11年法律第71号)74条に関する最高裁昭和44年(オ)第1061号同45年8月20日第1小法廷判決・民集24巻9号1339頁参照)。
そして、登記の更正は、権利に関する登記に登記官の過誤による錯誤又は遺漏がある場合に、①登記上の利害関係を有する第三者の承諾があるとき又は②当該第三者がないときに限り、登記官によって職権でされるものであるから(不動産登記法67条2項、1項)、権利変動の原因となる法律行為を前提としてされるものではなく、また、登記の更正の原因となる上記事情も否認の対象となり得るものとはいえない。
そうするであるとすれば、登記の更正は、特段の事情がない限り、破産法164条1項の「権利の…変更をもって第三者に対抗するために必要な行為」に該当せず、同項の対抗要件否認の対象とならないものと解すべきである。」

2014年4月28日月曜日

非免責債権であることを理由とする破産債権者表への執行文付与の訴えの可否

最判平成26年4月24日
最高裁判所ウェブサイト(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140424163457.pdf)

「免責許可の決定が確定した債務者に対し確定した破産債権を有する債権者が,当該破産債権が非免責債権に該当することを理由として,当該破産債権が記載された破産債権者表について執行文付与の訴えを提起することは許されないと解するのが相当である。 」

執行文付与の訴えではなく、書記官に対する執行文付与の申立てよるようにということのようです。

しかし、「破産事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官は,破産債権者表に免責許可の決定が確定した旨の記載がされている場合であっても,破産債権者表に記載された確定した破産債権
がその記載内容等から非免責債権に該当すると認められるときには,民事執行法26条の規定により執行文を付与することができるのであるから,上記破産債権を有する債権者には殊更支障が生ずることはない」といえるかは疑問に思えます。

破産債権者表を見ても、「悪意の」不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法253条1項2号)であることや、「故意又は重過失によ」る「人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」(同項3号)であることは分からないからです。