2013年8月30日金曜日

2013年8月23日金曜日

破産申立ての委任を受けた弁護士が財産散逸防止義務を負うものとされた事例

東京高判平成25年2月6日
判タ1390号358頁

「債務者との間で同人の破産申立てに関する委任契約を締結した弁護士は、破産制度の趣旨に照らし、債務者の財産が破産管財人に引き継がれるまでの間、その財産が散逸することのないよう、必要な措置を採るべき法的義務(財産散逸防止義務)を負う。また、正式な委任契約締結前であっても、依頼者と弁護士の関係は特殊な信頼関係に立つものであるから、委任契約締結後に弁護士としての職責を全うし、正当な職務遂行をなすため、依頼者の相談内容等に応じた善管注意義務を負う。

2013年8月22日木曜日

破産財団に対して債務を負担する第三債務者は、破産事件記録の閲覧・謄写をすることができる利害関係人に該当しないとされた事例

東京地決平成24年11月28日
金法1976号125頁


「「利害関係を疎明した第三者」とは、破産事件に即していえば、破産手続によって直接的に自己の私法上又は公法上の権利ないし法律的利益に影響を受ける者を意味すると解するのが相当である。」

不動産賃貸借契約終了後の再生債務者・破産管財人の占有に基づく賃料相当損害金が共益債権・財団債権になる範囲

東京高判平成21年6月25日
判タ1391号360頁
金法1976号107頁

「再生手続開始決定がされた後、再生債務者が不動産の明渡期限経過後も当該不動産の占有を継続した場合には、それにより生じた損害金債権は、再生債務者等が再生手続開始後にした行為によって生じた請求権として共益債権となり、それが破産手続に移行した後は、破産財団に関し破産管財人がした行為によって生じた請求権として財団債権となるものと解するのが相当である(最高裁判所昭和43年6月13日第一小法廷判決・民集22巻6号1149頁)。
そして、この場合に共益債権ないし財団債権となるのは、再生債務者等ないし破産管財人の行為と相当因果関係のある損害、すなわち、当該不動産についての共益費用等を含む賃料相当額であると解すべきである。」
「また、上記賃料相当損害金についての遅延損害金が発生する場合において、再生債務者等が再生手続開始後にした行為によって生じた請求権として共益債権となり、あるいは破産財団に関し破産管財人がした行為によって生じた請求権として財団債権となるのは、民事法定利率による遅延損害金であると解するのが相当である」

再生計画案付議時に想定していなかった事態の発生と再生計画の解釈

東京高判平成25年4月17日
判タ1391号354頁
金法1976号102頁

「再生計画案における権利権利変更等の効力は,再生債権者の承認に由来するものであり、そうであるとすると、再生計画案における条項の解釈は、付議決定時点における再生債権者として通常理解しうる解釈をもって決定するのが相当であるし、債務者による一方的な解釈をしうる余地を設けることも相当ではない。また、再生計画案である以上、その内容、特に弁済に関する事項は、再生債権者が理解できるものでなくてはならず、このことは控訴人の指摘を待つまでもなく、いわば自明の理というべきである。しかし、再生計画案の付議決定の時点において計画案が想定していなかったような事態がその後生じ、この想定していない事態を前提にした条項が規定されていない場合には、民事再生法、破産法の原則に照らして、再生債権者の公平、平等を念頭に解釈してこれを解決していくのが相当である。」

「再生債権者が複数の再生債権を有し、その一部について保証等の担保が付されている場合において、再生手続開始後第1回弁済前に連帯保証人による弁済等がされたことにより、再生債権の残額に変動が生じた場合に、本件再生計画によれば、どのような計画弁済をするかということは、本件再生計画が付議決定された平成21年12月4日の時点において、想定されていなかった事態であったというほかない。そして、本件一本化条項を含む本件再生計画は、そのような事態を想定していない状況で策定され、議決の上認可されたものであるから、本件再生計画の解釈においても、その付議決定時点における再生債権者として通常理解し得る解釈をもって決することはできず、結局は、民事再生法、破産法などの原則に照らし、解釈するほかないケースであったというほかない。そして、これらの原則及び本件再生計画の特質などから解釈した本件一本化条項の意義等については原判決が説示したとおりであるから、本件一本化条項に基づき控訴人の保有する複数の再生債権を一本の再生債権とし、これに対して計画弁済がされると解することはできないというべきである。」

再生計画履行中の企業の新たな再生手続における諸問題

弁護士 南賢一
金法1976号4頁

2013年8月19日月曜日

取立権の行使にあたり第三債務者から受領した手形について、民事再生手続開始決定後に支払いを受けることは不当利得となる

大阪高判平成22年4月23日
判時2180号54頁
NBL1007号98頁

「民事執行法上の債権差押命令に基づく取立権は、被差押債権の換価のために差押債権者に認められた権利であって、被差押債権の金銭価値の実現が許容されるにすぎず、転付命令と異なり、被差押債権自体が取立権者に移転するわけではないから、被差押債権自体を譲渡し、免除し又はその弁済を猶予するといった行為については、取立目的を超える行為として、これらを行うことはできないものである。被差押債権の支払に代えて手形を受領し、被差押債権については弁済したものとすることは、代物弁済の合意であり、通常、弁済や弁済提供の法的効果がない手形の授受により被差押債権を消滅させる処分行為であって、取立目的を超える行為に当たることは明らかである。控訴人は、取立権の行使は、現金の受領に限らず、代物弁済の受領をすることも含まれると主張するが、上記のとおりであって採用することができない。そうすると、差押債権者である控訴人と第三債務者らとの間において、被差押債権の支払に代えて本件各手形を授受するという代物弁済の合意をしたとしても、その効力は債務者に及ばないものである。したがって、本件各手形が第三債務者らと控訴人との間において、被差押債権の支払のために授受された場合はもちろん、支払に代えて授受された場合であっても、甲野社に対する関係では、被差押債権は消滅しておらず、控訴人は、本件開始決定後に民事再生法39条1項に反して、債権差押命令に基づく執行として、第三債務者らから金員の支払を受けたというべきである。」

再生手続における事業譲渡、会社分割・合併(民事再生法の実証的研究第15回)

信州大学准教授 川崎祐子
NBL1007号78頁

2013年8月1日木曜日

継続的給付の差押えがされた場合の否認等について(破産手続・民事再生手続における否認権等の法律問題 第2回)

大阪地方裁判所第6民事部判事 今中秀雄
大阪地方裁判所第6民事部判事 福田修久
大阪地方裁判所第6民事部判事補 釜村健太
法曹時報64巻7号49頁